有馬公認会計士・税理士事務所運営
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貸付事業用宅地等とは、被相続人等の貸付事業の用に供された宅地等で次の(1)又は(2)のいずれかを満たす当該被相続人の親族が相続または遺贈により取得した部分をいいます(それぞれに掲げる要件の全てに該当する部分で、それぞれの要件に該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得した持分の割合に応ずる部分に限られます)。
(1)被相続人の貸付事業の用に供されていた宅地等
被相続人の親族が、相続又は遺贈により取得し、被相続人の貸付事業を申告期限までに引き継ぎ、その宅地等を相続税の申告期限まで保有し、当該貸付事業を営んでいること
(2)被相続人と生計を一にする親族の貸付事業の用に供されていた宅地等
被相続人と生計を一にしていた親族であって、相続又は遺贈により取得し、相続開始前から申告期限まで引き続きその宅地等を自己の貸付事業の用に供し、申告期限まで引き続きその宅地等を有していること
また、この場合被相続人と被相続人と生計を一にする親族との間での地代又は家賃の支払いがないことが必要です。
(1)は被相続人が営んでいた貸付事業を親族が相続するケース、(2)は生計一親族が被相続人の宅地等で貸付事業を営んでいたケースです。
2つの条件で共通して重要なのは事業を相続税の申告期限が終了するまでは
①相続した宅地を所有し続ける
②事業を営み続ける
という条件がある事です。
事業を継ぐ気はないからとすぐに廃業したり、相続した宅地等を売却したりすると一部例外を除き小規模宅地等の特例対象から外れるため、小規模宅地等の特例の適用を受けるためには事業は少なくとも申告期限までは続ける必要があります。
①不動産貸付業、駐車場業、自転車駐輪場業および準事業(事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うもの)をいいます。
➁特定同族会社事業用宅地等は除かれます
③平成30年4月1日以降の相続から「相続開始前3年以内に、新たに貸付事業の用に供された宅地等(相続開始の日まで3年を超えて引き続き特定貸付事業(貸付事業のうち準事業以外のもの)を行っていた被相続人等の当該貸付事業の用に供されていたものを除きます)を除きます)」という要件が付け加えられました。
→③の要件については詳しくは 被相続人等の貸付事業の用に供されていた宅地等
をご覧ください。
被相続人と生計を一にする親族が貸付事業を行う場合、被相続人からは当該宅地の地代や建物の家賃は無償であることが必要です。なぜなら相続が発生した場合、被相続人と生計を一にする親族が被相続人の宅地等を相続した場合、賃貸人と賃借人が同じになり、貸付事業を継続できないためです。
①相続開始の日まで3年を超えて引き続き貸付事業の用に供されていたもの
及び
➁相続開始の日まで3年を超えて引き続き特定貸付事業を行っていた被相続人等の当該貸付事業の用に供されたもの
をいいます。
従って➁に該当する場合は、3年以内に貸付事業の用に供した宅地等であっても被相続人等の貸付事業の用に供されていた宅地等になり、貸付事業宅地等の貸付期間の要件を満たします。
表にすると以下のようになります。
区分 | 貸付期間要件 | |
相続開始前3年以内に貸付事業に供された宅地等 | 3年を超えて引き続き特定貸付事業を行っていた被相続人等 | 満たす |
上記以外の被相続人等 | 満たさない | |
相続開始前3年を超えて貸付事業に供された宅地等 | 満たす |
特定貸付事業とは、貸付事業のうち準事業以外のものをいいますが、被相続人等の貸付事業が準事業以外の貸付事業に当たるかどうかは、社会通念上、事業と称するに至る程度で当該貸付事業が行われていたかどうかにより判定することになります。
参考となるものとしては、所得税基本通達26-9のいわゆる5棟10室、所得税基本通達27-2の有料駐車場等の所得が参考になります。
所得税基本通達26-9(建物の貸付けが事業として行われているかどうかの判定)
建物の貸付けが不動産所得を生ずべき事業として行われているかどうかは、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付けを行っているかどうかにより判定すべきであるが、次に掲げる事実のいずれか一に該当する場合又は賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況等からみてこれらの場合に準ずる事情があると認められる場合には、特に反証がない限り、事業として行われているものとする。
(1) 貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。
(2) 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。
所得税基本通達27-2(有料駐車場等の所得)
いわゆる有料駐車場、有料自転車置場等の所得については、自己の責任において他人の物を保管する場合の所得は事業所得又は雑所得に該当し、そうでない場合の所得は不動産所得に該当する。
平成30年4月1日から令和3年3月までの間に相続又は遺贈により取得した宅地等については、平成30年4月1日以降に新たに貸付事業の用に供されたもの(相続開始の日まで3年を超えて引き続き特定貸付事業を行っていた被相続人等の当該特定貸付事業の用に供されていたものを除く)が貸付事業用宅地等の対象となる宅地等から除かれます。
区分 | 適用要件 | |
被相続人の貸付事業の用に供されていた宅地等 | 貸付期間要件 | 相続開始前3年以内に、新たに貸付事業の用に供された宅地等(相続開始の日まで3年を超えて引き続き特定貸付事業を行っていた被相続人等の当該貸付事業の用に供されていたものを除く)でないこと(注) |
取得者要件 | 被相続人の親族であること | |
事業承継要件 | 被相続人の貸付事業を相続税の申告期限までに承継し、かつ、申告期限まで当該貸付事業を営んでいること | |
保有継続要件 | その宅地等を相続税の申告期限まで保有していること | |
被相続人と生計を一にする親族の貸付事業の用に供されていた宅地等 | 貸付期間要件 | 相続開始前3年以内に、新たに貸付事業の用に供された宅地等(相続開始の日まで3年を超えて引き続き特定貸付事業を行っていた被相続人等の当該貸付事業の用に供されていたものを除く)でないこと(注) |
取得者要件 | その貸付事業を行っていた生計一の親族であること | |
事業承継要件 | 相続開始前から行っていた自己の貸付事業を申告期限まで継続すること | |
保有継続要件 | その宅地等を相続税の申告期限まで保有していること | |
無償使用要件 | 被相続人に対して当該宅地等の地代や当該宅地等の上に建築されている建物の家賃の支払いがないこと |
(注)ただし、平成30年4月1日から令和3年3月までの間に相続又は遺贈により取得した宅地等については経過措置が設けられています。